認知症の方の食事介助って
どうしたらいいの?
認知症の方の食事介助をしていると、「食べてくれない」「食事を手で食べてしまう」「食べ物を飲み込まない」といった経験をすることは多いと思います。ここでは「食事拒否」への対処法と、それ以外の「よくある困ったこと」への対応をご紹介します。
認知症の方が食べてくれない!食事拒否の対処法
認知症の方の食事介助において、「食事を食べてくれない」という食事拒否はよく起こります。
この場合、介助者がその原因について気付いてあげること、そして適切に対処することがとても重要です。
ここでは考えられる原因と対処法をご紹介します。
- 原因1「それ」が食べ物かどうか認識できない
- 食事の前に目の前にあるものが「どのような食べ物なのか」を説明することや、介助者も目の前で一緒に食べてあげることで改善する場合も。
- 原因2「食べる」という方法がわからない
- 「どうやって食べるものなのか」を説明し、介助者が一緒に食べることで真似をして食べてくれることがあります。
- 原因3お箸やスプーンがうまく使えず、食べ物を掴めない
- 食器の利用が難しい場合には、おにぎりやサンドイッチといった手づかみ食に変更することも有効です。
- 原因4すぐに気が散ってしまう
- 食事中は周囲やテレビの音、部屋の明るさなどに注意しましょう。腰痛など体の一部分が気になって集中できない場合や、テーブルに飾ってある花や壁のポスターが気になるという方も。
- 原因5飲み込む力が弱くなっている、マヒがあり口が開かない
- 一度医師に相談して、食事の形状を再検討・変更すると食べてくれることがあります。
- 原因6服用している薬の副作用
- 診察時や薬が処方されるタイミングで、食事の状態について相談してみましょう。
- 原因7気分の落ち込みやうつ状態
- なるべく一人の時間を減らすことで気分が改善することがあります。また最初の一口を食べれば継続して食べてくれるケースもあるので、味見をお願いするなどきっかけ作りをしてあげることが有効なことも。
食事中によくある「困った」対処法
食事拒否以外に、認知症の方の食事介助を行う中でよく起こる「困りごと」の対処法をご紹介します。
- 手で食べてしまう
- 隣で箸やスプーンを使って一緒に食べてあげることで、真似をして箸・スプーンなどを使い始めてくれることがあります。
- 飲みものを飲みたがらない
- 取っ手がついているコップに変更したり、普段つかっている見慣れた湯飲みなどにしたりすることで改善するが場合があります。
- 途中で食事をやめてしまう
- 食事量の見直しや事前の排泄誘導、テーブルや椅子の高さを調整して正しい姿勢が取れるようにしてみましょう。
- 食べ物をずっとかみ続けている
- 食材の区分を見直したり、食べやすい食材を選んだりしてみましょう。また歯や入れ歯の噛み合わせがずれていることもあるので、歯科で定期的に確認してもらいましょう。
- 周りの人が気になって食事に集中できない
- 特に一人暮らしだった方などは静かな環境に慣れており、人が大勢いるような場所では落ち着かない傾向があるため、静かな環境で食事ができるようにしてみましょう。
- 食べ終わってもずっと箸でつかもうとしている
- 食器に描かれた模様やデザインを、食べ物だと認識していることがあるため、何も描かれていない、シンプルな食器にしてみましょう。
- 食べたばかりでも「食べていない」と言う
- 「そうですね、これから準備しますね」と気持ちを受け取ってから、「散歩に行きましょうか」など違う話題へ話を誘導し、食事から気をそらしましょう。また、1回あたりの食事量を減らして回数を増やしたり、少量のおやつを用意したりすることが有効な場合もあります。
- 食べもの以外のものを食べてしまう
- 身の回りにできるだけ余計なものや危険なものは置かないようにしましょう。食べてしまう時間帯が昼食前・夕食前などの場合は食事の時間を早める、少量のおやつを食べる、他の人がいる場所で過ごす、寂しくないように話しかけるといったことで改善される場合も。
- 歯磨きをして/させてくれない
- 歯ブラシを見せたり触ってもらったりしながら、「これから歯磨きをしましょう」と声をかけてみてください。一緒に歯磨きをしてあげることも、「これから何をするのか」が伝わるため効果的です。
なによりも大切なことは、怒ったり急がせたりしないことです。これらは食事に対して恐怖を感じさせ、ますます食事を拒否したり、困りごとが起こってしまったりする要因となります。
患者さんや施設利用者には、食事の時間は「コミュニケーションを取れる楽しい時間である」ことや、「お腹を満たせる幸せな時間である」ことを伝えられるようにしたいですね。