高齢者の口腔ケアってどうしたらいいの?
高齢者の口腔ケアをしっかり行うことは、認知症リスクの軽減や誤嚥性肺炎の予防、体調改善につながるということをご存知でしょうか?
ここでは食べる楽しみを長く味わってもらうためにも重要な口腔ケアの必要性やメリット、手順などを詳しくご紹介します。
口腔ケアとは?高齢者の口腔ケアが必要な理由
高齢者にとって口腔ケアは大変重要です。口腔ケアとは「口の中を清潔に保つこと」ですが、ひいては体全体を健康に保つために必要なケアなのです。
虫歯や歯周病などで口腔機能が低下すると、「よく噛む」「味わう」「飲み込む」といった動作がスムーズにできなくなるため、十分な栄養素を摂取できなくなってしまいます。それが、以下のような悪い流れを生み出してしまいます。
口腔機能の低下→低栄養→運動機能の低下→摂食障害や認知症の進行また高齢者になると、口腔内の唾液減少によって自浄作用が低下していきます。
加えて以下のような理由により、口腔ケアが大変重要なものになっているのです。
- 虫歯や歯周病菌の増加
- 治療跡や入れ歯の利用
- 舌の表面についた舌苔による味覚の感じづらさ、味覚の変化
- 唾液減少によるドライマウス(口腔内の乾燥)
高齢者の口腔ケアのメリットとその効果
高齢者の口腔ケアを行うことで得られるメリットと効果をご紹介します。
- メリット
- 効果
- 口腔内トラブルの減少
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- 虫歯や歯周病といった口腔感染症が改善する
- 歯周病改善によって入れ歯がしっかり固定できる
- 唾液の分泌を促進
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- 歯や口内の粘膜を保護し、口腔感染症を予防する
- 栄養状態の改善
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- 食べ物をしっかりと咀嚼し唾液と混ぜることで、消化・吸収が促進、体に栄養が行き渡る
- 感染症や発熱を予防
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- 口内細菌の増加を抑制し、感染症や肺炎、発熱を予防する
- 誤嚥性肺炎を予防
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- 誤嚥時に口内細菌が気道に入ることを防ぐ
- 脳の活性と認知症予防
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- 口の開閉、咀嚼がしっかりできるようになることで脳の中枢神経に刺激を与え、認知症を予防する
- 味覚の向上で食欲増進
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- 唾液増加による味覚の改善、食欲増進、栄養改善につながる
- コミュニケーションの改善
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- 口臭が減少し、口・舌の動きがよくなることで発音も改善する
- 口腔機能の低下を防ぐ
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- 老化によって衰えやすい口腔機能全般の改善・向上により、健康状態の回復が期待できる
高齢者の口腔ケアの手順とポイント
高齢者の口腔ケアは、以下のような手順で行います。
- ①うがい
- 歯の隙間に入った汚れを洗い流すイメージです。いわゆる「ガラガラ~ペッ」ではなく、口の中で水を「ブクブク」してもらいましょう。 【手順】水を口に含み、左右の頬、唇と歯の間を順番にブクブクし、最後に口内全体をゆすぎます。
- ②歯の清掃
- 歯ブラシやガーゼ、綿棒などを使って清掃します。
歯ブラシは鉛筆のように持ち、歯茎にあたっても痛くないよう力の入れ過ぎに注意します。- ●介助が必要な場合●
- できるだけ自力で行ってもらい、出来ない動作だけを介助します。また磨き残しがある場合は歯ブラシの反対の手指で頬や唇を広げ、歯を一周磨きます。
- 腕を上げていられない場合→肘を支える
- 手首が回らない場合→電動歯ブラシを使用する
- ●寝たきりや重度障害の方●
- 誤嚥の危険性があるため、歯ブラシではなくガーゼや綿棒を使って口内清拭します。
介助者は使い捨て手袋などを着用した上で指に殺菌ガーゼを巻き、水やうがい薬で適度に湿らせた後、口腔内の汚れを拭き取っていきます。細かい部分は綿棒を使用します。
指を奥まで入れ過ぎないように注意してください。
- ③粘膜の清掃
- 頬・唇の内側や上顎、歯茎など、粘膜部分の清掃をします。 【手順】スポンジブラシや口腔ケア用のウェットティッシュでやさしく拭き取ってください。
- ④舌の清掃
- 舌にこびりついた舌苔(白い苔のようなもの)を取り除きます。 【手順】舌用のブラシやスポンジブラシで奥から手前、中央から外の方向に拭き取ります。やりすぎると味蕾を痛めてしまうので、やさしく拭き取りましょう。
- ⑤頬のストレッチ
- 口を動かしやすくするために行います。 【手順】歯ブラシの背の部分やスポンジブラシで、頬を内側から外へやさしく押しながら、上下に3~4回動かしましょう。
- ⑥うがい
- 仕上げにもう1度行いますが、最後のうがいは洗口液を使用してもいいですね。
- ⑦義歯の洗浄
- 入れ歯はぬめりが出やすいので、専用の歯ブラシ・歯磨き粉を使用して洗浄します。 【手順】入れ歯を下→上の順にやさしく外し、水ですすぎます。その後、専用の歯ブラシで磨き、義歯洗浄剤につけ置きしましょう。
口腔ケアのポイントは、以下の4つ。
- できることは自力で
- 手指を動かすことはリハビリにもなるので、サポートは最小限で。最後のチェックは介助者がしっかり行いましょう。
- 姿勢をチェック
- 水や唾液の誤嚥を防ぐために、顎はしっかり引いた状態で行います。
- 短時間でやる
- 口腔ケアに抵抗を感じる高齢者は多いです。無理強いせず、口腔ケアの重要性を説明した上で短時間で終わらせましょう。
- 口腔内をチェック
- ケアをしながら、虫歯や歯茎の炎症などトラブルがないかチェックしましょう。気になることがあれば、すぐに歯科医や歯科衛生士に相談を。